ZEP-IMG-02 INDEX
 ABOUT BBC SESSION


12月、週末の深夜。
僕は、外気の寒さが窓から伝わる暖房の利いたオフィスにいた。
比較的ボリュームの小さなプロジェクトがパラレルに進行しており、すべて年内に仕上げなくてはならない。
打ち合わせや作業進行チェックなど、なかなか自分の担当パートを仕上げる時間がとれないから、こういう人の気配がない時間は、作業に集中できてありがたい。

Macのチャチなスピーカーからツェッペリンを流していた。
独特なグルーヴ感、ペイジとボーナムのかけひきの緊張感、どこまでも届きそうなプラントの声。
「やっぱり、ツェッペリンは偉大だよなぁ」
そう口に出さずにつぶやいた時、フラッシュバックのように過去のある時点の感触が甦ってきた。

高校時代。
僕は、体を壊して休学したのち、留年をして、結局その学年を終わらせることができずに退学した。12月だった。
これまで目の前に見えていたレールから脱線して、目的地が見えなくなってしまっていた。そのときの気持ちは、敗北感という言葉がいちばん近かったように思う。
毎日深夜まで絵を描いていた。ラジカセからは、ツェッペリンが流れていた。
ツェッペリンの音は、似たバンドが存在しない。その絶対的な存在に惹かれていた。
自分は、どんな存在になれるのだろうか?
漠とした不安と焦燥感がありながらも、みなと同じレールを歩まなくてもいいという安堵感もあった。

フラッシュバックは、「Since I've been loving you」で最高潮にリアルな感触に達した。あの時感じた安堵感を今も感じている。なぜだろう?こんなに追いまくられているのに。まだ自分にはなにか出来ると信じているのだろうか?
遙か昔、絶対的な敬意をもって聞いていたツェッペリンが、今聞いても最高だったことが、たまらなく嬉しかったからかもしれない。

Led Zeppelin