LOST HIGHWAY TITLE


LYNCH IS BACKというキャッチ・フレーズとともに、「ロスト・ハイウェイ」へのリンチ・マニアの期待は相当なものだったね。
日本にフィルムが到着するかどうか分からない時点で「ブルータス」は試写会を企画してたし、「CUT」は2号連続で特集組むし、ほとんどの雑誌の映画紹介は「ロスト・ハイウェイ」一色で埋まっていたように思う。
作り手の思い入れが、どこまで一般人に浸透したんだろう?
「ツイン・ピークス」にあれだけ熱中したクセに、熱が醒めるのも激しかった一般人に。

公開されてから随分時間がたっちゃったけど、観た記憶が薄まる前に、ここに残しておこっと。




デビッド・リンチの映画って、ほんとにアートしていると思う。
この「ロスト・ハイウェイ」を観て、つくづくそう思ったよ。
彼でなくては作れない映画。まさに作家の映画。
最新CGを駆使したSFX映画よりも、遥かに衝撃的な映画体験を与えてくれたうえに、後遺症さえも残してくれたこの作品は、まさにリンチの最高傑作だと思う。

何かが潜む闇。
人間が闇を恐れるのは、そこに生命を脅かす何者かが存在することを、遺伝子が太古から記憶しつづけているからだ、とは永井豪のデビルマンでのセリフ。

水の表面にはった氷は、水という存在とその深さを隠すカバーだよね。 僕らが普段、気にも止めていない闇は、そんな氷の表面を視界に入れているだけなのかもしれない。その奥には、なにかがある…。


日常生活に潜む闇を、TVドラマという枠で暴走させた「ツイン・ピークス」は、エポックな出来事だった。特に、謎が謎のまま横たわっていた前半部分は素晴らしかったね。
間延びしちゃった後半でも、リンチの監督した回だけは、異様な緊張感が存在していた。最終回は、「ロスト・ハイウェイ」が出現するまで、リンチのベスト1だと決めつけていた。

この、神経がビンビンに張りつめるような緊張感を、リンチは見事に映像に昇華しちゃうんだよな。空間に配置された闇。空間に漂う空気感(ノイズの使い方はもう専売特許だね)。異様な人物たち。そして、夢の中でみる夢のようなボーダーレスな次元感覚。
この「ロスト・ハイウェイ」は、そんなリンチの毒がたっぷり染み込んだディナーだ。

今回のメイン・ディッシュは、獄中のフレッドという男が、閃光とともにピートという別人に入れ替わってしまうという、現実的にも映画としてもあってはならないことをやってしまったことだ。
そして、フレッドの妻であるレネエと、ピートが熱をあげるアリスが、1つの女性の存在に収束される二重構造。

時間は一方向にしか進まないが、終点が視点とマージされ、メビウスの輪のように出口のない悪夢をナビゲートするのは、出たぁ!という感じのミステリーマンだ!
あああああ。ステキすぎる。ここでは、謎は謎のままに横たわり、裏切りは何度も繰り返される。


妻が浮気しているのでは?と疑惑に取り付かれたフレッド。彼らが抱き合い、フレッドの背中にレネエの手がからみついていくシーンの緊張感がたまらない。射精寸前、全身に力が膨張していくときのようだ。
そして、長い廊下の奥の闇の向こうへ行ってしまったフレッド。

ポルノ・ムービーのオーディションで、銃を突きつけられながら、自ら着ているものを一枚ずつはぎ取っていくアリスのゴージャスさ。僕らはMr.エディとともに、視姦の共犯者になる。

フレッドと入れ替わる瞬間、閃光とともにピートの身に起こったなにか(それが何かは語られない)。一体、なにがあったのだろうか?

ヘッド・ライトの中、ピートの上で体を揺らすアリスの妖気。そして、その後の一言。

オープニングのデビッド・ボウイーの曲から、ゾクゾクと血糖値が上がっていくような音楽の使い方もサイコーだ。サントラは言うまでもなく、ナイン・インチ・ネイルズのCDまで買ってしまった。


すべてがリンチのカラーに染まっている。
僕らは目を開けて、リンチの悪夢に身を任せるしかない。
その心地よさは、リンチ・


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