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発狂する唇
1999 JPN 85min. Vista
1999-11-01 東京ファンタスティック映画祭(渋谷パンテオン)

「女優霊」「リング」の脚本家・高橋洋の新作カルト・ホラーと聞いて、どういう映画を想像しますか?この2本の映画の恐さは中田秀夫監督の力が大きいとは思うけど、新たな恐怖映画の誕生を期待するのは当然でしょ?
しかしですね。観てビックリ。これは…、ヘンですよ。不況にあえぐこの日本で、こういう映画を作れちゃうこと自体が不条理です(笑)


女子高校生が次々と首を落とされ殺害されるという事件が起こって、失踪した長男が容疑者としてあげられた家族が登場します。玄関先にはマスコミがはりつき、脅迫いたずら電話が鳴り、罵声とともに窓ガラスに石が投げつけられ、気が狂いそうな状況の母と娘2人。と、ここまではシリアスな展開。
兄の無実を信じていた妹の里美は、ふと立ち寄った心霊相談所で霊能力者・悦子に真犯人を捜して欲しいと頼みこみます。そして、里美の家に悦子と助手が乗り込んだところから、この映画は狂いはじめます。


この映画の展開を言葉でどう表現したらいいだろう? たとえば酒の席で、ヘンなネタが妙に話を膨らませて止まらなくなっちゃう状態ってあるじゃない?「をいをい。なんでこんなネタでここまで盛り上がれるんだよ?」って状態。
まさにこの映画は、そういうノリで進行していきます。ストーリーはどんどん破綻を重ねながら、かまわず突っ走っていって、先の予想なんて不可能!


ストーリーをキーワードで追っていくとね…

霊視、降霊、使い魔、淫乱の姉、中年刑事、犯される母、兄への想いを演歌で表現する里美、超能力、FBI、同時通訳、下僕と化す母、死体と結合、やたらに吐きまくる里美、監視、真犯人、斧、森の中の戦い、何かの光臨。

さあ、どうストーリーにする?ここに、インフォウェッブのCMみたいなノリの阿部寛と人気モデルの鈴木一真がからんでくるんだよね。
「HANA-BI」以来演技派俳優として評価が高かった大杉漣が、股間をパンパンに膨らませてレオタード姿で登場した時、笑いや驚きを越えて「……。」となってしまいました。
きっと、これってカルトなんでしょう。でもカルトムービーって意図して作っちゃいけないんじゃなかったっけ?観客が作り上げていくものだよね?カルトムービーってさ。
でもきっと、この映画にそんな定義は意味ないのかもしれない(^^;


狂っていくのは、この映画自身。きっと、渋谷パンテオンの大スクリーンなんかで観てはいけない映画なんでしょう。いい経験をしました。


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