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千社札(せんじゃふだ) 1998-08-17
千社札 手塚家の墓石には千社札が貼られている。
千社札というのは、お寺の門の柱などに貼られている名前や屋号を印刷したお札のことです。見たことあるでしょ?
なんでそういうものが、手塚家の墓石に貼られているかというと…。

僕の母方のひいおじいちゃんにあたる人が、火消しの頭領だったらしいんです。「め組」とか「は組」とか呼ばれていた、あの火消しです。火事が名物みたいだった江戸の町では、命をはった粋な職業として火消しが活躍してたんだよね。
でも待てよ。ひいおじいちゃんは、明治大正の人だったはず。ひいひいおじいちゃんが火消しだったのかな。確かめようにも母はもうあちら側だし、母方の家系は母の代で途切れてしまっているから。

今の手塚家の墓は、元々母方の墓だったものを受け継ぐ形で建っているんです。 だから正面は手塚家だけど、右側面は母方家系の墓歴が記されているの。
そういうわけで、火消しだった母の家系には、いまも火消しの歴史を受け継ぐ方々がお参りにいらっしゃいます。もう何代目の方がお参りくださっているのか分からないけど、墓石にはお彼岸のたびに、「江戸消防墓参会」「第一区墓参会」「政五郎」という千社札が貼られていくんです。まだ母が存命中、墓を建て替える前は、もっとすごい数のお札が貼られていて、東京大空襲でぼろぼろの墓石だったけど、異様にカッコよかったんだ。

ところで、お参りしてもらっている政五郎さんって、どんな人なんだろう?僕と弟はかねてから興味を抱いていました。一度も会ったことがないんです。お寺の住職にお聞きしても、分からないという答えだったし。
でも、ひょんなことからこの政五郎さんの顔を観ることができたんです。
数年前、東京ではすっごい深夜に放送されている『探偵ナイト・スクープ』という関西の番組で、江戸の粋って何?という質問に、江戸墓参会の政五郎さんというテロップが入った画面に品のあるおじいちゃんが映っていたんです!おおおおおお!このお方が政五郎さんだったのかー!
しかも偶然、弟もその番組を観ていて、兄弟揃って深夜に雄叫びをあげていたのでした。

というわけで、僕には火消しの血が流れているんですよ。てやんでぇ、こちとらチャキチャキの江戸っ子でえぃ!バックドラフト手塚と呼びやがれってんだい、ちくしょうめい!
…そうか、だからくしゃみした直後に、ちくしょう!って言うんだ…。


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