Diary
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異人たちとの夏 1998-07-05
夏ですな。
自宅周辺は住宅地なので、昼間は人の気配が消え、時が止まったかのような空気が漂っています。その風景をみていて僕の頭をよぎるのは、「ゾンビの世界みたいだなぁ」ってこと。これは映画「ゾンビ」のごとく、生きている人間がいなくなってしまった世界を思い描いているわけですが、夏という季節は、盆にまつわる死者との交流という印象があります。

どうして話がそっちに行ってしまうかというと、僕が母を事故で亡くしたのが8月15日、お盆のまっただ中だったのと、癌で入院した父を見舞いに通っていたのが夏だったことが、強く記憶に残っているからです。

父を亡くしたのは秋も深まった頃ですが、空が高くシャツを汗で濡らしながら病院に通った記憶が、父の最期の記憶とリンクしているんですね。

大林宣彦監督の映画「異人たちとの夏」で、死んだ両親(鶴太郎と秋吉久美子)と再会した中年男(風間杜夫)が、夕食の卓を囲んで別れの言葉を交わすシーンがありました。カットバックで両親と男が交互に映されるんだけど、両親の姿がだんだん薄く消えていくんですよ。
このシーンは、いつも涙で画面がみえなくなります。

自分と親との関係って、それぞれの立場からどう見えるのかは別だと思いますが、親の愛情には言葉で語れない感謝をしています。理解しようと努めてくれる、いい親でした。

夏は死者の季節。吉本ばななの小説で、死んだ友人のことを思い出していたら、その友人が感謝していることを伝えにくるシークエンスがありますが、本当にそうであったらいいな、と思います。マジで。


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