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「ヘソマガリ」を読んで 2000-07-09

クレイフィッシュ──未到の日米同時株式公開を実現した史上最年少である26歳の社長というキャッチコピーとともに、ネット業界以外からも一斉に注目を集めている会社です。
その日米同時株式公開までの松島社長とクレイフィッシュの歩みをまとめたのが、ダイヤモンド社から刊行された「ヘソマガリ」(峰岸和弘 薯)という本。

僕がビジネス書を読むなんて、珍しいでしょ?
ネット系ベンチャーの成功秘話に興味があったからというよりも、クレイフィッシュという会社の動きをなにかと気にしていたこともあって、彼らの成し遂げたことがどうストーリーとしてまとめられているのかが興味あったんです。
松島社長や熊谷氏が、どんな人物として描かれているんだろう?ってね。

これからはインターネットだ!という、根拠はないけど強い確信が僕の中に芽生え、社長と角田部長に直談判してウチの会社のWEB SITEを作り始めたのが96年の春。
まだブラウザが、ネットスケープのベータ版だけだった頃の話。当然、僕がやろうとしていることを理解してくれる人も多くはありませんでした。
そして僕も、WEB SITEをどうやって作るのかまるで知らなかった頃です。HTMLをどう書くのか、どういう構造になっているのかも分かっていませんでした。ただ、パソコン通信を94年頃からやっていたので、ネットを使ったコミュニケーションがどのようなもので、どんなメリットやデメリットがあるのかは、把握しているつもりでいました。
そして、印刷物の制作がメインだったウチの会社で、ビデオ制作というメイン・ストリームでない仕事を続けてきた僕は、モニタ上で見栄えのするデザイン・ワークのノウハウを、印刷物的平面レイアウトと融合させたWEBという新しいメディアで、業務として会社のメイン・ストリームに近づく仕事をしたいと考えていた頃です。

その頃、HTMLを含めWEB制作の技術面をサポートしてくれていたのが、話題のクレイフィッシュだったんです。
はじめて社長である松島庸氏と会った時、その若さとしっかりとした口調の説明に、やたら嬉しく感じたことを覚えています。先人の作った<やり方>に自分を合わせていくしかなかった社会や組織の中で、こういう若い人間が自分たちで道を踏み固めていくことが、ネットという世界では可能なんだということにワクワクしちゃって。

僕の勤める会社、アイデアビューローの第1期WEB SITEは、こうしてクレイフィッシュの松島氏の協力があって完成したものでした。
その後、ヤマハ発動機WEB SITE制作のプレゼンから第1期オープンまでの技術を担当してくれたのが、熊谷氏でした。
新宿2丁目の雑居ビルにあったオフィスに徹夜で詰めたり、うちのオフィスで夜通し作業してもらったこともありました。熊谷氏と制作を担当していたアオキさんが、HTMLをテキストエディタでどんどん埋めていく姿に「すげ〜」って思ったものです。
クレイフィッシュとの共同作業は97年まで続き、社内の専用線環境整備の際にDNS設定に再び熊谷氏がタッチしたのを最後に、僕らはクレイフィッシュの急成長を横目でみるようになったのでした。それは、担当が多忙すぎて連絡がつきにくい場面が何度もあったことと、僕らが技術面を内部で処理するようになったからなんだけどね。
僕らは独力で自分たちの作業フローを作ってきたんだけど、デザインとユーザー・ナビゲーションづくり以外の<やり方>については、クレイフィッシュの熊谷・アオキ両氏から教わったことが多かったと思います。感謝。

僕らは、印刷物というコンテンツ制作をメインにする会社の中で、矛盾のない立場を取ることを選びました。WEB制作から、ホスティング・サービスとASPにビジネス・モデルを見いだしたクレイフィッシュとは違い、僕らはデザインとコンテンツ制作では他には負けないクオリティを提供する<ブランド力>を当初の目標としていました(その目標はある程度達成できたので、今は次のフェーズに入ってるけど)。このあたりの方向性の違いは、ベンチャーと中小企業の資質の違いですね。
それでもWEBを仕事にしている以上、新しいことへのチャレンジは<いつも>です。会社の中にあって、ベンチャー的カラーの強い部署といっていいでしょう。
クレイフィッシュ松島氏のように、オトナの作った悪しき習慣にNOといえるビジネス展開が、僕らもそのまま通用しているかどうかは、営業スタッフのベールの中(笑)でも制作チームはけっこうキツイこと言い合いながらも、半ば意地になって自分たちが納得できるものを世の中に出そうとがんばっています。

「ヘソマガリ」を読んで、すでに大昔のように感じる自分たちのWEB制作業務スタート当時の頃を思い出しながら、個人SITEのDiaryを読むような感じでクレイフィッシュという会社のストーリーを楽しみました。
本としての作品性は薄いのですが、ビジネスの参考書としては役に立つ(元気が出る)ものが詰まっていたと思います。



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