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ひとつ、終わったって感じです 2000-01-26

僕が、今働いている会社の中で、密かに目標にしていた人―前田さんが亡くなりました。残念でなりません。今僕が作っているサイトが、前田さんの最後の企画になってしまいました。2月3日にプレ・オープンする、第一段階カタチになったものを、目にして欲しかったのですが…。

仕事の進め方やこだわり方など、前田さんのやり方すべてが、正解ではなかったかもしれません。かつては、衝突して、会社を辞めていったライターやデザイナーが大勢いました。「剃刀の前田」なんて呼ばれていましたっけ。それほど前田さんの仕事に対する姿勢には、カリスマ性がありました。

WEB制作に携わる以前、僕はビデオ制作室スタッフでした。
僕の会社は、今も昔も印刷物の企画/制作がメイン業務ですから、ビデオ制作というのは、メインストリームではなかったんですね。社内の野良犬的存在だったとも言えます。まぁ、今やっているWEB制作業務も似たようなものがあるけど。
だから、ビデオ制作室時代の自分は、かなり孤立した存在だったんです。そんな時代、S社のビデオを作るときに、物事をきちんとジャッジしてくれる前田さんの存在が、すごく大きく感じたんですよね。
CGで図面フリップを作る時、前田さんが手描きで描いた下原稿をくれるんだけど、その正確さは驚異的でした。人間CADとも呼ばれていましたね。斜体がかった独特の文字で(FONT化ができそう)、正確にセンター揃えで寸法の数字が書き入れてあったのも驚愕でした。
でも、前田さんが書くビデオ用ナレーション原稿は、固くてね。「これじゃ耳から入って理解しきれないよ〜!」って。いいたいことがどんどん膨れていって、濃縮して還元されないままの内容になっちゃうんだよね(笑)

前田さんのいいところは、仕事以外で接する時、仕事上での感情を切り離して接してくれたことです。これって、誰でも出来ることじゃないと思います。
僕がWEB制作を担当するようになって、打ち合わせ室で煮詰まってたりすると、ふらりと部屋に入ってきた前田さんが、喫煙するついでに何気ないアドバイスをくれたことがあって、それが求めている答えではないにしろ、話のポイントをはずしていないところが凄いなと思っていました。頭だけつっこんで去っていく人が多いんだけど、たいていはけっこう無責任な言葉を残していくことが多いだけに、その物事の把握力ったら、やっぱ頭の切れ方が違いました。

前田さんが一度入院した後、会社に復帰された時、マジに嬉しく感じました。自分がいろいろジャッジをする立場になって、前田さんの偉大さが以前よりも分かってきたんだろうね。
再入院されて、一週間前、かなり危ないらしいという話を耳にした時は、ショックでした。そして、亡くなられたという知らせを聞いた時、なにか終わったと感じました。

ウチの会社のトップの方々、常に一緒に仕事をしてきたチームの人たちに比べたら、僕なんてほんとささやかな接点しかなかったと思います。でも、そんな僕でさえ、クリエイターとしてこの会社で働いていくのなら、いつか前田さんのような存在にならないとね、と思っていたんです。
棺に横たわった身体の上を、いつも来ていたスーツが覆っていました。復帰されることを最後まで望んでらしたと。僕の親父の最期もそうでしたが、仕事に対する想いの強さに圧倒されてしまいます。
心よりご冥福をお祈りしております。そして、ありがとうございました。



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